法定相続情報一覧図とは?メリット、作成手順、活用方法を解説
「家族が亡くなり、相続の手続きを始めようとしたら、銀行や役所から『戸籍謄本一式を持ってきてください』と言われた。でも、戸籍の束は重いし、一箇所に預けると他の手続きが進まない……。」
このような悩みを解決し、相続手続きを効率化してくれるのが「法定相続情報一覧図の写し」です。2017年から始まったこの制度は、今やスムーズな相続には欠かせないツールとなっています。
本記事では、相続の実務の観点から、この制度の仕組み、具体的な作り方、そしてなぜ法定相続情報一覧図が必要なのかを詳しく解説します。

法定相続情報一覧図とは何か?(制度の概要)
制度の目的と公的な性格
「法定相続情報証明制度」とは、法務局(登記所)の登記官が、亡くなった方の相続関係を公的に証明する制度です。
従来、相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本をひとまとめにした「戸籍の束」を、銀行や法務局などの各窓口に提出する必要がありました。 しかし、この制度を利用して、家系図のような形式の「一覧図」を一度作成し法務局に登録すれば、以降は法務局が発行するA4用紙1枚の証明書が、戸籍の束の代わりを果たしてくれます。
「戸籍の束」との決定的な違い
戸籍謄本は、古いものだと手書きで読みづらく、解読に時間がかかります。一方、一覧図は現代の文字で整然と記載されているため、銀行の担当者なども一目で相続関係を把握できます。これにより、窓口での待ち時間が短縮されるという隠れたメリットもあります。
法定相続情報一覧図を作成する5つのメリット
なぜ、手間をかけてまでこの図面を作るべきなのでしょうか。主なメリットは5つあります。
① 複数の手続きを「同時並行」で進められる
これが最大のメリットです。戸籍謄本の原本は1セット数千円かかることもあり、何セットも作るのは不経済です。しかし、1セットしかないと、A銀行に預けている間はB銀行の手続きができません。一覧図は法務局で「無料」で「何枚でも」発行してもらえるため、複数の銀行や証券会社へ同時に申請が出せます。
② 各種窓口での確認時間が短縮される
金融機関の窓口では、提出された戸籍に漏れがないか、誰が相続人かを慎重に確認します。戸籍の束だと長時間待たされることも珍しくありませんが、法務局の認証がある一覧図なら、確認作業が数分で終わることもあります。
③ 法務局が内容を保証してくれる安心感
「この戸籍で足りているのか?」という不安は、一般の方にとって大きいものです。一度法務局の登記官がチェックして認証を与えた書類ですから、提出先とのトラブルも防げます。
④ 手数料が一切かからない(発行手数料無料)
役所で戸籍を取得するには1通450円〜750円かかりますが、この一覧図の写しの発行手数料は「無料」です。
⑤ 5年間はいつでも再交付が可能
一度登録すれば、法務局で5年間保管されます。後から「新しい口座が見つかった」という場合でも、保管期間内であれば再交付を受けられます。
具体的に「何」に使えるのか?(活用シーン一覧)
この1枚の書類があれば、以下の手続きで戸籍の束を省略できます。
- 不動産の相続登記(名義変更):法務局での申請に必須。
- 預貯金の解約・名義変更:都市銀行、地方銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫など。
- 証券口座の名義変更:株や投資信託の手続き。
- 相続税の申告:税務署への提出書類として(※平成30年より可能になりました)。
- 生命保険金の受取:各保険会社への請求。
- 自動車の名義変更:陸運局での手続き。
- 年金の手続き:遺族年金の請求など。
法定相続情報一覧図の作成手順(4ステップ)
では、実際にどのように作るのか。その流れを詳しく見ていきましょう。
① 必要書類の収集(ここが一番の難所です)
まずは「証拠」となる戸籍を集めます。
被相続人(亡くなった方):出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本。
被相続人:住民票の除票(または戸籍の附票)。
相続人全員:現在の戸籍謄本。
申出人(手続きする人):身分証明書(運転免許証など)。
※「出生から死亡まで」の戸籍は、転籍や法改正により複数に分かれていることが多く、漏れなく集めるのは大変な作業です。
② 法定相続情報一覧図の作成
法務局のホームページにあるテンプレートなどを参考に、パソコン(Excelなど)や手書きで作成します。
亡くなった方の氏名、生年月日、最後の住所、死亡日を記載。
相続人の氏名、生年月日、続柄、住所(任意)を記載。
これらを家系図のような線で結びます。
③ 申出書の作成と提出
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を記入し、ステップ1の書類とステップ2の図面を添えて、法務局へ提出します。 提出先は、以下のいずれかの地を管轄する法務局です。
被相続人の本籍地
被相続人の最後の住所地
申出人の住所地
被相続人の不動産の所在地
④ 内容の確認と「写し」の交付
登記官が内容を精査し、間違いがなければ「認証文」の入った一覧図の写しが交付されます。通常、窓口提出から数日から1週間程度で完了します。
作成時の注意点とよくある失敗
便利ですが、いくつか気をつけなければならないポイントがあります。
「遺産分割協議」の内容は反映されない
この図面はあくまで「誰が法定相続人か」を示すものです。「誰がどの土地を継ぐことになったか」までは記載されません。そのため、実際の手続きでは、この一覧図に加えて「遺言書」か「遺産分割協議書」を提出することになります。
相続放棄した人がいても記載される
家庭裁判所で相続放棄をした人がいたとしても、この一覧図には「相続人」として記載されます。放棄の事実は、別途「相続放棄受理証明書」で証明する必要があります。
代襲相続や数次相続は複雑
お子さんが先に亡くなっていてお孫さんが相続人になる(代襲相続)場合や、相続手続き中に別の相続人が亡くなった(数次相続)場合、図面の作成難易度が飛躍的に上がります。
行政書士に依頼するメリット
「自分でやろうと思ったけれど、戸籍集めで挫折した」という方も多いです。行政書士に依頼すると、以下のような付加価値があります。
戸籍収集の完全代行
職権(職務上請求)を用いて、全国の役所から効率的に戸籍を取り寄せます。
正確な図面作成
複雑な親族関係でも、法務局のルールに則った正確な図面を作成します。
他の手続きとの連携
一覧図の作成だけでなく、その後の遺産分割協議書の作成や、銀行解約手続きまでワンストップでサポート可能です。
まとめ:相続手続きの「最初の一歩」に
法定相続情報一覧図は、作成するまでに少し手間がかかりますが、一度作ってしまえばその後の手続きがスムーズになります。
相続は悲しみの中で慣れない手続きを数多くこなさなければなりません。少しでもご遺族の負担を減らすために、この制度を賢く利用してください。
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