「特定技能」申請ガイド

深刻な人手不足に悩む企業にとって、外国人材の雇用は重要な解決策の一つとなっています。その中でも、2019年に創設された在留資格「特定技能」は、即戦力となる外国人材を受け入れるための有力な選択肢として注目を集めています。しかし、特定技能の申請手続きは非常に複雑であり、要件も細かく定められているため、「何から始めればいいかわからない」「自社で手続きを行う時間がない」と悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、行政書士の視点から、在留資格「特定技能」の基本から申請手続き、必要書類までを解説する申請ガイドをお届けします。

在留資格「特定技能」とは?

「特定技能」とは、国内の人材確保が困難な一部の産業分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れるために設けられた在留資格(ビザ)です。特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。

特定技能1号: 特定の分野において「相当程度の知識または経験を必要とする技能」を持つ外国人向けの資格です。在留期間は通算で最長5年となり、原則として家族の帯同は認められていません。


特定技能2号: さらに熟練した技能を持つ外国人向けの資格です。在留期間の更新に上限がなく(事実上の永住への道が開かれます)、要件を満たせば配偶者や子どもの帯同も可能となります。近年、対象分野が拡大され、より長期的な人材定着が見込めるようになりました。

対象となる主な職種

特定技能で外国人を雇用できるのは、国が定めた「特定産業分野」に限られています。当初は14分野でしたが、統廃合や2024年の分野追加を経て、現在は以下の16分野が対象となっています。

対象となる16分野:介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
※特定技能2号については、介護分野(別途「介護」の在留資格があるため)を除くすべての分野で受け入れが可能となっています。自社の業務がどの分野に該当し、どのような業務内容が許可されるか、事前によく確認することが重要です。

在留資格の取得要件

特定技能の在留資格を取得するためには、外国人本人と受け入れ企業(特定技能所属機関)の双方が厳格な要件を満たす必要があります。

① 外国人本人の要件
以下の2つの要件を満たす必要があります。
技能要件: 各分野が定める「技能評価試験」に合格すること。
日本語能力要件: 日常会話と業務に必要な日本語能力を測る「JFT-Basic」または「日本語能力試験(JLPT)N4以上」に合格すること。
※特例として、同じ分野で「技能実習2号」を良好に修了した外国人は、上記2つの試験が免除され、無試験で特定技能1号へ移行することが可能です。

② 受け入れ企業の要件
労働関連法令、社会保険関係法令、租税関連法令を遵守していること
過去に外国人労働者の受け入れにおいて不正行為を行っていないこと
外国人の報酬額が、同等の業務に従事する日本人と同等以上であること
特定技能1号外国人に対し、仕事や日常生活をサポートするための「支援計画」を策定し、適切に実施できること(※この支援業務は、国から登録を受けた「登録支援機関」に全部委託することも可能です)

申請の手順と期間

特定技能の申請は、対象者が「海外にいる場合(新規入国)」と「日本国内にいる場合(技能実習や留学からの変更)」で異なりますが、大まかな手順は以下の通りです。

事前診断:専門行政書士が許可の可能性について診断します。
外国人雇用の可否を、入管実務の専門家である行政書士が診断いたします。事業実態や待遇面におけるリスクを事前に整理し、許可の可能性を判断します。ご相談を経て方針をご納得いただいた後、正式に契約を締結し、申請業務をサポートいたします。
必要書類の準備: 申請人(外国人)および所属機関(企業)の双方で必要な書類を収集・作成します。
企業と試験合格者または技能実習修了者の外国人との間でビザの取得を条件とした雇用契約(内定)を締結後、卒業証書や職歴を証明する履歴書など、必要な書類を収集します。また事前準備として、支援計画の策定、外国人への事前ガイダンスの実施、健康診断の受診などを行います。その後に、事業におけるその職務の必要性を証明する書類、また学歴と業務の関連性など外国人雇用の必要性を疎明する書類を作成します。
書類の作成過程および完成後に内容をご確認いただき、ご署名をいただいて申請準備を完了します。
出入国在留管理局への申請代行: 申請代理行政書士が、企業所在地を管轄する出入国在留管理局へ申請書類を提出します。
標準的な審査期間は1か月〜3か月程度ですが、時期や案件の複雑さにより長引くこともあります。また追加で書類の提出が求められた場合、行政書士が新たに追加の書類を作成して提出します。

必要書類

特定技能申請の最大の特徴は、提出書類が非常に多岐にわたり、膨大な量になることです。状況や分野によって異なりますが、基本となる主な必要書類は以下の通りです。

① 外国人本人が用意する書類

  • 履歴書、パスポートの写し、証明写真
  • 技能試験および日本語試験の合格証明書(または技能実習修了を証明する書類)
  • 健康診断個人票(入管指定のフォーマット)

② 受け入れ企業が用意する書類

  • 特定技能雇用契約書および雇用条件書の写し
  • 特定技能外国人の報酬に関する説明書(日本人と同等以上であることの証明)
  • 企業の登記事項証明書、役員の住民票の写し
  • 直近の決算文書、労働保険・社会保険・税金の納付証明書
  • 1号特定技能外国人支援計画書および、登録支援機関との委託契約書(委託する場合)

さらに、各産業分野を管轄する省庁が設置する「分野別協議会」への加入手続きや誓約書など、分野特有の追加書類も求められます。

アドバイス

在留資格「特定技能」は、企業の人手不足解消に直結する素晴らしい制度です。しかし、法令遵守が厳格に求められ、申請書類の作成難易度は他の就労ビザと比べても群を抜いて高いのが実情です。少しの書類の不備や認識違いが、不許可や手続きの大幅な遅延に繋がり、採用計画に支障をきたす恐れがあります。
当事務所では、自社の業務が特定技能の対象になるかの要件確認から、書類作成、入管への申請代行までのサポートを行っております。外国人材の確実かつスムーズな採用に向けて、ぜひご相談ください。